ドアを開けると異臭が鼻をつく。その部屋は壁が煤で真っ黒だ。誰が見ても火事を出したと分かる。
部屋に入るといきなり平行感覚が狂った。真っすぐ立っていられない、右に傾いでいく気がした。しかしそれは錯覚だったらしい。一緒に部屋に入った奴に聞くと「後ろから見ていたがそんな様には見えなかった。」と言う。気のせいだと自分に納得させ仕事にかかる。しかし、度々平行感覚が狂う。その部屋以外で仕事をしているとそんな症状は起きない。何か釈然としないが説明できる程、確たる物もない。ただ嫌なのだ。

それでもなんとか2時には仕事を終えた。
片付けを終え、現場責任者と話して分かったことだが、その部屋の住人が部屋に火を放ち自ら命を絶ったのだそうだ。それを聞いて背中に寒気が走った。
私には霊感はないので身体に変調をきたしたのは、火事によって発生した化学物質のせいだと思いたい。