クリスマスの思い出

かれこれ20年以上前のことですが、
その日その家の女性陣は色めき立っていた。ある物が届いたからである。
そのある物、ファッションにあまり興味のない人でも一度くらいは名前を聞いたことはあるであろう「エルメス」。
送り伝票を見る限り中身はスカーフとなっている。
折しも時は12月。女性陣は当然自分たちへのプレゼントだと思った。
「おとうさんもなかなかいいトコあるじゃない。」などと浮かれた彼女達は、送り主の帰りを待った。
彼が帰宅した。母は期待を押し殺し彼に送られてきた荷物を渡す。彼はバツが悪そうに受け取った。
それを見た母は確信した、これは自分たちを驚かせようとしたのにばれてしまった為バツが悪そうな態度だと。
日は過ぎ、クリスマス。
彼は一向にあのエルメスを彼女たちに渡す気配がない。
しびれを切らした彼女たちは、彼に詰め寄った。エルメスから届いた物は私たちへのプレゼントではないのかと。



彼は暫く考え、こう言った。


「ああ、あれなら俺の新調したスーツの裏地に使った。なかなかいい柄なんだ。出来上がったら見せてやる。
 ところで、なんでエルメスのスカーフ買った事知っているんだ?」

最高値を付けていた彼の株はこの一言を境に大暴落した。